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ブックカバーチャレンジ1日目 メルニボネの皇子

【ブックカバーチャレンジ 1日目】

ブックカバーチャレンジという試みがあります。

あ、「チャレンジ」は試みか。

出だしから、文章につまづく。最近書いてないからなぁ…。

という独り言はさておき、コロナウイルスで全世界が大変なことになっています。さらに大きな悲劇を避けるため、家にいることを促し、活字文化の素晴らしさを改めて確認し合おう、ということで、7日間、本の表紙をアップして広げていこうというイベント、それがブックカバーチャレンジなのでした。

なんと、ボクの師匠の藤村正宏さんから回ってきました。びっくり。

このブックカバーチャレンジという試みで、いくつかのことを考えました。

「○○といえば、誰々」と思い出されること。

この試みはどうやって生まれてどこへ行くのか?

果たして何の本を紹介したものか?

などなど…。

普段から文学作品をたくさん紹介し、昨日もFacebookライブで「ビジネス書ばっかり読んでいてはダメだよ」という師匠から「本を紹介してね」と頼まれたら、ビジネス書は選択肢に入らない。

「文化芸術、教養を磨くことを大事にしよう。これからはますます大切になることです」というお話も繰り返し、されています。

効率を追い求める時代は終わり、ムダとされたことが価値を持つ。グローバル化・インバウンドの大きな動きに、世界的な感染症が、待ったをかけました。誰も予想できなかった。

いや、すでに辿った過去であり、予測していた未来でした。

ということから浮かんだのは、カミュの「ペスト」。

伝播する死を前に人間はどうするのかということを描いた歴史的傑作です(持っているけど読んでいない、いわゆる積ん読)。

ブックカバーを挙げるのであれば、読んでなくてもいいのかもしれないけど、せっかく7冊紹介する機会をもらったのだから、読んだ本にしますね。

「これからは文学がさらに大きな価値を持つ」

「自分の好きなことを語ろう」

師匠の言葉を思い出すと、役に立つことより、とにかく自分の好きな本を7冊だ。そう思いました。

最近、すっかり積ん読にハマり、買った本の9割は読まないでいたので、ずいぶん前に読んだ本の紹介になります。

たぶん、今ボクがFacebookでつながっている人はピンと来ないかもしれない、でもボクの価値観を作って来た本。

「メルニボネの皇子」 マイクル・ムアコック

数年前、新装版を書店で見つけて買いました。

ダークファンタジーの傑作で、虚弱体質の主人公、エルリックは世界を統べる栄光ある帝国の皇子。しかしその帝国の退廃により、従兄弟のイイルクーンと政争を繰り広げることとなり、世界を混沌に傾ける魔剣、ストームブリンガ―を手にすることとなるが……。

というお話です(25年以上前に読んだ記憶だけで書いていますので、細かいところは違うかも)。

読んですぐ、滅びの予兆を感じるこの作品。

実はバトンを渡してくれた藤村さんが好きな作家、フィツジェラルドの作品を読んだときに(冬の宮殿というタイトルだったかな…)この感覚を思い出しました。

「失われていく」物語。現実ではあまり味わいたくないこの感覚は、文学で味わうのが一番だと思います。

当時読んだ現物は学生時代から3回ほどした引っ越しのうちに、無数の段ボールの中に封印されたまま。

果たしてどこに眠っているのか……。
封印されし英雄の書。

この機会に見つけてみようと思って部屋を捜索しましたが……。探しているうちに7日が終わってしまいそうだったので、棚に並べてあった新装版をひとまずアップします。

大好きな作品が、装いも新たに書店に並んでいたので買っておかねば、と思い、手に入れておいてよかった。

……ここまでどなたかまだ読んでくれていますか?

実は、ここから先のことをお伝えしたかったのですが(たぶんあなたの知りたいことではないのは薄々感じています……)、エルリックの物語は6巻目の「ストームブリンガ―」で完結したはずだったのですが、マイクル・ムアコックはあれから続きを書いていたのです。

「あ、あれでしょ? 『タネローンを求めて』でしょ?」と思ったあなた、その作品のことではありません。

この表紙は最高です。

ムアコックは様々な主人公を生み出しましたが、その主人公たちは永遠の戦士として常に旅を続けています戦い続ける戦士の一人、エルリックの物語もまた、続きが語られているのです。そう、ストームブリンガ―で完結しておらず、続いていくのです。

実はボクも、続きをこちらの新装版で入手したものの、こちらは積ん読。

「ストームブリンガ―」から、その後、3巻も続いています。どういうことなのか。

また一巻から読み直してみようかな。やっぱり読まないのかな。

青春時代に聴いたあのお気に入りの曲を聴くと、そのころの思い出がよみがえる……。そんな感覚を、ボクは本で味わっています。

ありがとう、ムアコック。ありがとう、藤村先生。豊かな時間を過ごしています。

……ここまで読んでくれた方、伝わっていますか?

伝わらなくても仕方ない。ボクの好きな本を語ろうと趣味に振り切りました。

ここ10年、伝える力を学んできて、「伝わらなくてもいいや」と開き直って書いているのだからなんとも矛盾の塊で、でもそれが心地よい。文章を書くって楽しいですね。

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