真面目に働いているのに、なんだか疲れてしまった…。そんな方に読んでほしい本があります。
【夢はどうしてかなわないの?】 作 大野正人 絵 中川学 監修 出口保行 汐文社 2015年
おはようございます。北海道の鹿追町図書館で働いている、石川誠です。本の紹介のブログを書いています。
「夢をかなえよう!」というタイトルの本は多いのですが、なぜかなわないのかという方面からのアプローチ。気になって手に取りました。タイトルは大事ですね。
この本、区分としては児童書になりますが、実は大人にこそお薦めします。
それには、理由が3つあります。
まず、忙しい大人でもすぐ読めるボリュームだから。
そして、大人はこどもと違って、もしかしたら日々を生きるのに精いっぱいで、夢をあきらめてしまっているかもしれないから。
最後に、この本を読み終えたとき、あなたの心に新たなエネルギーが宿るから、です。
どんなにいい本も、読まなければ内容はわかりません。
この本は、64ページで全ページに絵が入っていて、フルカラー。とっても読み進めやすいです。すいすいと読めば、10分くらいで読めるかな?
本好きだけど次から次へと買ってしまって積読書が趣味の方や、ふだんは忙しくて本を読まないけど、そのくらいのページなら読めそうだ、と思った方にぜひ読んでほしいです。
ボクは、何度かこの本を読んでいるのですが、紹介文を書くために読み返しました。
今回、冒頭から、ちょっと涙ぐんでしまいました。
それは、少年少女たちが、「しょうらいはやきゅうせんしゅに!」「おおきくなったら、おかしやさんになるの!」「こんちゅうはかせになるんだ!」と夢を抱くシーン。
ああ、小さいころに好きだった、こころざしたものがあったな。日々、目の前の仕事、生活で忘れてしまっていた…。
自分の小さいころを振り返ってみる。自分の夢を思い出すのにしばらくかかる。
そうだ、ボクは、小学生の頃、学研のマンガひみつシリーズが好きで、毎日のように図書館に来て、貸し出しカードを小箱から探していたなぁ…。
懐かしい図書館の風景が脳裏によみがえった。今より背が低くて目線も低かったので、数々の棚を見渡して、大人の自分が感じるよりものすごい量の本に囲まれていた感覚、その記憶……。
「こんなにいっぱいいろんな本があるのだから、いつか、自分の名前の入った本をここに並べられたらいいなぁ」と、そんな風に思っていたことを思い出した。
これを思い出しただけで、本を開いた価値がありました。
さて、この本の中では野球選手・お菓子屋さん・昆虫博士と、自分が好きになったものにあこがれた瞬間に、夢の世界への招待状が届きます。
夢の世界へと向かう少年少女たちに、それを邪魔する「悪魔」たちが次々と襲い掛かってくる。
その悪魔は、自分の弱い心が形を変えたもの。
新しいことをはじめるのは、勇気がいります。みらいでおこるかもしれないイヤなことをたくさん話して、先にすすもうとする気持ちを奪ってしまう悪魔、『ショーキョク』。
これまでの失敗をなんども思い出させることで心を縛り付け、その心をどんどん弱らせて、やがていろいろなことを怖がらせる悪魔、『オクビョー』。
「夢なんて、どうせかなわない」「がんばったって、むだ」という人の言葉を信じたときに現れる悪魔、『クウキョ』。
子どもたちは、心の力を一つずつ手に入れて、悪魔を打ち破っていきます。
さて、彼らの夢はかなうのでしょうか?
と書くと、「子ども向けの本だもの。かなうだろう」と思いますよね。
……思いますよね。
ボクもはじめはそう思って読み進めました。
ここが、大人にも読んでほしいと思うポイントなのです。きらびやかな夢を見て、それが叶ってめでたしめでたし、という筋書きは、子どもに与えたいけど大人は信じていない。だから、この本は…。
ぜひ、あなたも彼らと一緒に夢の世界への旅をしてみてください。
ボクは、今、『ジョーシキ』という悪魔に手こずっています。
ジョーシキは強い。これまで、自分が学んで経験して、作り上げてきたものだから。社会を形作ってきたものだから。
「これまで」の正解なのです。悪魔には見えません。ボクらを導いてくれる味方に思えます。
でも、社会がどんどん変わっていく時代には、ジョーシキに縛られていてはうまくいかないのです。
世の中を学んで、心の力を増やして、工夫してチャレンジする。
今、迷いなく道を進むあなたには、この本は必要ないかもしれない。
でも、うまくいかないことがあって『自分はどうしたらいいのだろう』『どうしたいんだろう』と悩み、迷ったらこの本を手に取ってほしい。
あなたが、忘れていた大切なことを思い出すきっかけになってくれる、おススメの本です。
この本を読んで、もしかしたら、どこかにおいてきてしまった『夢の世界への入場券』、もう一度探してみませんか。
【夢はどうしてかなわないの?】 作 大野正人 絵 中川学 監修 出口保行 汐文社 2015年
「ボッコちゃん」星新一 新潮社
ブログの大先輩、石川直樹さんがショートショートの神様、作家の星新一さんの作品を薦めていたので、ボクも、「家に何冊かあるよなー、段ボール箱の中かなー」と、本棚を探すと、運よく、何年か前に表紙がリニューアルされた「ボッコちゃん」が出てきました。全部読むのもいいけど、まずは気になる一篇を。
『愛用の時計』
さすが、ショートショート、始まった、と思ったら、3ページで話が終わる。
なんとなく、ボクの師匠に教わった、世阿弥の唱えた能の技法、「序・破・急」を感じました。
K氏が気に入って、大事に大事にしていた大好きな時計。手入れも欠かさず、メンテナンスもきちんとしていて、そのおかげで時間に正確。
ところが、あるとき、その時計の時刻が狂ってしまう。その訳とは…。
その訳が、書かれているようないないような、解釈を読者に任せるところも、起承転結の「結」ではなく、序破急の「急」でしょうね。
3ページで、いろいろ考えさせられました。
ワンアイディアを、惜しげもなく3ページで使い切ってしまうのは、もったいない気もしますが、それができるところが星新一さんのすごいところ。
序破急、大切ですね。
あ、ボクの家の本棚にもありますが、鹿追町図書館でも貸し出ししています。というか、だいたいの本屋さんや図書館でも読めると思います。